2016年12月4日日曜日

「日本は外向き」? 日経ビジネス秋場大輔副編集長に問う

日経ビジネス12月5日号に「ニュースを突く~内向き志向、日本は人ごとか」というコラムが載っている。タイトルからも分かるように、「少なくとも現時点では、日本は内向き志向ではない」との前提で筆者の秋場大輔副編集長は話を進めている。だが、この前提自体が怪しい。
阿蘇山(熊本県阿蘇市) ※写真と本文は無関係です

記事の当該部分は以下の通り。

【日経ビジネスの記事】

そもそも足元の失業率が3%強とほぼ完全雇用の状態にあるし、初等教育の段階から「資源の少ない我が国は自由貿易体制の下で成長を遂げ…」といった考え方を刷り込まれているから、米国や英国のような内向き志向に転じることはないと思うかもしれない

しかし、豊かさを享受できないと考える人が増えているのは事実。いつ不満が爆発してもおかしくはない。「まさか」とは思うが、そのまさかが米国や英国では起きている。

----------------------------------------

日本は難民や移民の受け入れに消極的だ。つまり「内向き志向」と言える。政府はそうでも国民は違うのだろうか。朝日新聞による昨年12月の世論調査では「日本が難民を積極的に受け入れた方がよいと思うか」との問いに対し、「積極的に受け入れた方がよい」は24%にとどまり、「そうは思わない」が58%に達した。

日本の難民や外国人労働者の受け入れ制限についてどう思うか」という質問でも似たような結果が出ている。「もっと受け入れる方がよい」は22%で、「今のままでよい」の65%を大幅に下回る。この調査からは、国の「内向き志向」を国民も支持する構図が浮かび上がる。

貿易に関しても「内向き志向」は根強い。「初等教育の段階から『資源の少ない我が国は自由貿易体制の下で成長を遂げ…』といった考え方を刷り込まれている」と秋場副編集長は言い切っているが、そもそも日本は「自由貿易体制」になっているのか。

自由貿易」とは「国家が商品の輸出入についてなんらの制限や保護を加えない貿易。輸入税・輸入制限・為替管理・国内生産者への補助金・ダンピング関税などのない状態」(大辞林)を指すはずだ。

日本はコメや乳製品で「自由貿易」を実現しているだろうか。そもそも「自由貿易」体制の下ではTPPなど必要ない。すでに「自由貿易」の仕組みは整っているのだから。今の日本は自由貿易体制ではないし、コメなどの輸入自由化には農業関係者らの強い抵抗もある。

内向き志向」が少ないから「不満が爆発」しないのではなく、国の政策が国民の「内向き志向」に応えているから、「不満が爆発」しないと捉える方が自然だ。

ついでにもう1つツッコミを入れてみたい。

【日経ビジネスの記事】

グローバリズムの進展は何をもたらしたのか。一部の大企業だけが潤ったという事実が一つ。国際競争を勝ち抜くため、多くの企業で人件費の抑制という事象も起きた。

----------------------------------------

グローバリズムの進展」が過去にあったかどうか怪しいが、あったとしよう。それで潤ったのは「一部の大企業だけ」なのか。例えば、中国の1人当たりGDPは過去20年で大幅に増えている。中国人が全体として経済的に豊かになっているのは、「一部の大企業」に勤める人だけが引っ張った結果なのか。それとも秋場副編集長の言う「グローバリズムの進展」とは別の要因で中国は豊かになったのか。

断定はできないが、「一部の大企業だけが潤った」との説明は違う気がする。


※記事の評価はD(問題あり)。暫定でDとしていた秋場大輔副編集長への評価はDで確定とする。秋場副編集長については以下の投稿も参照してほしい。

「まず日経ビジネスより始めよ」秋場大輔副編集長へ助言
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_14.html

享年77は「早世」? 日経ビジネス秋場大輔副編集長に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/77.html

0 件のコメント:

コメントを投稿