阿蘇山(熊本県阿蘇市) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
国内主要企業が長時間労働の是正に積極的に取り組んでいることが、日本経済新聞社が7日にまとめた「社長100人アンケート」で分かった。経営者の8割弱が「是正に着手した」と回答。「管理職の意識改革」「残業の事前許可」などを取り組みの柱にし、慣行に風穴を開けようとしている。労働力人口減少が避けられないなか、企業競争力の維持には働き方改革が急務であるとの危機感が浮き彫りになった。(関連記事と回答者一覧を企業面、詳細を8日付日経産業新聞に)
国内主要企業の社長(会長、頭取などを含む)を対象に、3カ月に1度、アンケートを実施している。今回の調査期間は11月16日~12月2日。146社が回答した。
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「146社が回答した」のに「社長100人アンケート」と名付けるのは、かなり苦しい。
さて、最も気になったのは、この後だ。
【日経の記事】
働き方改革は「アベノミクス新3本の矢の柱」と位置づけられ、安倍晋三首相自らが先頭に立つ「働き方改革実現会議」で議論を進めている。長時間労働是正は改革テーマの9項目の一つだ。
経営者の76.7%が「是正に着手した」と答え、「是正を検討」「すでに是正した」を合わせると96.5%に上った。
長時間労働の大きな要因が残業だ。是正の具体的な取り組み(複数回答)を聞いたところ、「ノー残業デーの設定」(77.6%)、「サービス残業の撤廃」(62.1%)などの回答が多かった。
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目を引いたのが「『サービス残業の撤廃』(62.1%)」だ。分母が146社全てなのか、「是正に着手」と回答した企業なのか、「是正に着手」「是正を検討」「すでに是正した」と回答した企業なのか、明確ではない。146社が分母の場合、調査対象となった主要企業の6割以上で、少なくとも最近までは「サービス残業」があったことになる。
言うまでもなく、サービス残業は違法だ。日本を代表する企業で、今も根強くサービス残業が残っていると、企業自らが教えてくれているのに、日経はサラッと流している。そこが残念だが、いかにも日経らしい。
今回の調査では「長時間労働」の定義が不明なのも引っかかるが、それ以上に気になるのが「長時間労働を元々させていない」という企業がどの程度あるのか分からない点だ。
「是正に着手した」が76.7%、「是正を検討」「すでに是正した」が合計で19.8%、残りの3.5%に「是正する気がない」「長時間労働を元々させていない」が入っていると推測できる。
現時点で長時間労働の実態がないのは「長時間労働を元々させていない」と「すでに是正した」だが、こうした企業が何%なのかは記事からは読み取れない。この辺りの数字は欲しい。
できれば「是正する気がない」と回答した割合も知りたい。是正する気がない企業の経営者がどうコメントしているか載っていれば、さらに好ましい。ただ、企業に寄り添う傾向の強い日経にそこまで求めるのは酷ではある。
最後に記事の最終段落に絡んで、要望を述べておきたい。
【日経の記事】
電通社員の過労自殺が注目を集めるなか、経営者の現状打破に対する意欲は高まっている。日本電産の永守重信会長兼社長はアンケートに対して「海外グループ会社は残業がほとんどゼロでも利益をあげており、日本でもできると信じている」とコメント。創業以来の働き方を改め、仕事のムリ・ムダをなくし2020年度の残業ゼロ達成をめざしている。
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今回の調査に回答した企業には「電通」も入っている。ならば、「電通社員の過労自殺が注目を集めるなか」で、電通社長がどうコメントしたのかは入れてほしかった。特段のコメントがなかった場合、なかったことを伝えるだけでも意味がある。これも、企業に寄り添うのが当たり前の日経にとってハードルは高いが…。
※記事の評価はC(平均的)。
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