佐嘉神社(佐賀市) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
アジアの資本市場で企業統治(コーポレートガバナンス)への関心が高まっている。新興国の経済成長が鈍り、世界の政治情勢に不透明感が強まるなか、ガバナンス改革が市場の安定につながると考えられるからだ。日本も改革競争から無縁ではいられない。
国際通貨基金(IMF)は10月に発表した金融安定性報告書のなかで、新興国でガバナンス改革を進めることの重要性を指摘した。株主が企業をしっかり監視する体制を整えておけば「外的なショックの株価への影響を抑え、暴落の可能性を低める」からだ。
IMFが企業統治の問題を持ち出した背景には、世界経済の先行きに不透明感が強まり、アジアなど新興国市場で危機の芽が育ちかねないとの懸念が横たわるのだろう。
「混乱に備え企業はシートベルト(=企業統治)をしっかり締めておけという警告だ」。国際金融の専門家はIMFの意図をこう解釈する。
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「アジアの資本市場で企業統治(コーポレートガバナンス)への関心が高まっている」と冒頭で言い切っているが、記事を最後まで読んでも「関心が高まっている」様子はうかがえない。IMFの報告書は新興国全般に言及したものだし、そもそもIMFは「アジアの資本市場」の参加者ではない。
「関心が高まっている」かどうかは、実は小平編集委員にも分からないのかもしれない。しかし、「アジア各国での企業統治」をテーマにすれば何とか記事を書けると思い付いた小平編集委員は「関心が高まっている」と書くしかなかった。そう考えると納得できる。ただ、小平編集委員の意に沿って関心の高まりを認めてくれる機関投資家ぐらい、いそうなものだ。関心の高まりを裏付けるコメントがあれば記事に説得力も出てくるのに、それを探す努力さえ怠ったのだろうか。
IMFの意図を解釈する人が「国際金融の専門家」という、よく分からない書き方になっているのも気になる。コメントの内容を見る限り、匿名にする必要は乏しそうだ。匿名にするとしても、所属先などもう少し具体性が欲しい。
続いては記事の後半に注文を付ける。
【日経の記事】
過去をふり返ると、アジアのガバナンス改革は危機対応の側面が強かった。通貨危機をきっかけに、1999年にはインド、韓国、タイの3カ国で取締役会の機能強化などをうたう企業統治コードが導入された。参考になったのは98年に同コードが作られた英国だ。
その後、2000年代を通じてアジア主要国ではコードが普及。タイでは3度の改定も実施された。英国発のガバナンス改革のうねりはアジア諸国で広がり大陸欧州を経て、15年になって日本に伝わった。
幹部のインサイダー取引問題が起きたタイのCPオールや、財閥支配への批判が強まる韓国のサムスン電子やロッテグループ。会長解任劇に揺れるインドのタタ・グループ。様々な問題や矛盾が一気に噴出しているように見えるアジア企業だが「ガバナンス改革の成果として、昔のように不祥事や問題を隠せなくなっているということを示してもいる」(米国の独立系大手運用会社)。
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何でもかんでも「ガバナンス改革の成果」として捉えようとするのが気になる。小平編集委員の説明を信じるならば「幹部のインサイダー取引問題」や「会長解任劇」が表沙汰になったのも「ガバナンス改革の成果」なのだろう。だが、常識的に考えれば上場企業の「会長解任劇」は「ガバナンス改革」以前でも隠せないはずだ。
例えば、三越で社長解任劇が起きたのは1982年だ。「英国発のガバナンス改革のうねりはアジア諸国で広がり大陸欧州を経て、15年になって日本に伝わった」のだから、三越の解任劇は日本にガバナンス改革が伝わるずっと前の話だ。
「幹部のインサイダー取引問題」も同様だ。ガバナンス改革が伝わる前から、日本でも多くの摘発例がある。ガバナンス改革をしようがしまいが、インサイダー取引が違法とされていれば、「幹部のインサイダー取引問題」は起きてくる。「ガバナンス改革の成果として、昔のように不祥事や問題を隠せなくなっている」例として「会長解任劇」や「幹部のインサイダー取引問題」が適切かどうかは、少し考えれば分かるはずだ。
記事の終盤にも少し触れておこう。
【日経の記事】
「一部で改革が足踏みする兆しも見え始めた。グローバル投資家の国・地域の選別がいっそう強まるのではないか」。アジア全域の主要投資家などから成るアジア企業統治協会(ACGA、本部・香港)のジェイミー・アレン事務総長は、こう指摘する。
例えば韓国。株主の行動規範を示すスチュワードシップ・コードの導入がすでに発表されているものの、経済界の反対で実現していない。ACGAと証券会社CLSAが発表しているアジア全域の企業統治ランキング(16年版)で、韓国は11カ国・地域中8位にとどまっている。
安倍政権下でガバナンス改革が離陸しランキング3位の日本も、社外取締役の質の向上など課題は多い。アジアの中でグローバル投資家に選ばれる市場となるために、ここで改革の手綱を緩めるわけにはいかない。
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韓国の話が分かりにくい。「スチュワードシップ・コードの導入がすでに発表されているものの、経済界の反対で実現していない」とはどういうことか。政府が導入を発表したのに、経済界の反対を受けて導入を撤回したのか。それとも導入時期を巡って調整が続いているのか。
普通に考えれば「導入がすでに発表されている」のならば、「経済界の反対」があっても、決められた時期に導入となるはずだ。色々調べてみても、どういうことか分からなかった。記事中でもう少しきちんと説明してほしい。
※記事の評価はD(問題あり)。小平龍四郎編集委員への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。小平編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日経 小平龍四郎編集委員 「一目均衡」に見える苦しさ
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_15.html
基礎知識が欠如? 日経 小平龍四郎編集委員への疑念(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_11.html
基礎知識が欠如? 日経 小平龍四郎編集委員への疑念(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_73.html
日経 小平龍四郎編集委員の奇妙な「英CEO報酬」解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post_19.html
工夫がなさすぎる日経 小平龍四郎編集委員の「羅針盤」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/10/blog-post_3.html
やはり工夫に欠ける日経 小平龍四郎編集委員「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/10/blog-post_11.html
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