2016年9月25日日曜日

どうした小田嶋隆氏? 日経ビジネス「盛るのは土くらいに」

日経ビジネスが届いたら小田嶋隆氏の「pie in the sky~絵に描いた餅ベーション」だけは必ず目を通すようにしている。同誌の書き手の中では抜きんでた存在だ。だが9月26日号の「盛るのは土くらいに」を読んで少し不安になった。あまりに非現実的なことを書いていたからだ。それは都知事報酬の半減に関するくだりで出てくる。
柳川の川下り(福岡県柳川市) ※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

小池都知事は、9月9日の定例会見で、「東京大改革実現に向け、自ら身を切る覚悟、姿勢を示すため」に、都知事報酬を半額にする条例案を提出することを発表している。

知事は、リーダーが率先して覚悟を示すことで、都政全般に波及効果が及ぶことを期待しているのだろう。が、私は、知事報酬削減の効果が波及したらしたで、かえって厄介なことになると思っている。仮に、都知事にならって副知事の報酬を下げる圧力が生じ、さらに都議会議員や都の職員の報酬が順次削減される流れになったらこれはもう目も当てられない。当然、給与削減のトレンドは民間にも波及するだろうし、そうなったら消費不況どころか、恐慌がやって来かねない

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都知事の給与半減がどんな影響を社会に与えるかは、厳密に言えばやってみなければ分からない。だが、「消費不況どころか、恐慌がやって来かねない」はいくらなんでも大げさだ。「都知事の給与半減が実現しても、それを主な原因とする恐慌は起きない」と個人的に保証してもいい。

都議会議員や都の職員の報酬が順次削減される」ぐらいのことはあり得る。だが、「当然、給与削減のトレンドは民間にも波及する」とは思えない。影響はあってもごくわずかだろう。

例えば、河村たかし名古屋市長は市長の給与を約3分の2の年間800万円に減額しているらしい。それが例えば同じ愛知県に本社を置くトヨタ自動車で賃金の大幅引き下げにつながっているだろうか。名古屋市内で激しい消費の落ち込みが起きただろうか。

名古屋市長と東京都知事では影響力が違うとか、河村氏と小池氏では政治力に差があるとか、色々と言えることはあるかもしれない。だが、「当然、給与削減のトレンドは民間にも波及する」と言える根拠に乏しいのも確かだ。

そもそも知事にそれほどの影響力があるのならば、報酬の倍増をお願いしたくなる。そうなれば民間にも給与アップの流れが波及して、景気回復どころか空前の好景気を期待できる。だが、それが「絵に描いた餅」に過ぎないのは小田嶋氏にも分かるだろう。

1990年代に大手金融機関が相次いで破綻しても、2008年にリーマンショックがあっても、2011年に大震災が起きて重大な原発事故を誘発しても、日本で「恐慌」は起きなかった。なのに都知事の給与半減で「恐慌がやって来かねない」と煽るのは、明らかに「盛り過ぎ」だ。今回の小田嶋氏のコラムのタイトルを借りて言うならば「盛るのは土くらいに」してほしい。


※今回のコラムの評価はC(平均的)。小田嶋隆氏への評価はA(非常に優れている)を据え置くが、弱含みではある。

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