震災後の熊本城(熊本市) ※写真と本文は無関係です |
【ITproの記事】
Amazonは中国で自社サイト「Amazon.cn(亞馬遜)」を運営している。だが、フィナンシャル・タイムズによると、同社の中国におけるシェアはわずか1.4%で、同国の電子商取引サイトとしては5番目の規模。これに対しAlibaba Groupには、BtoCのTmall、CtoCの「Taobao(淘宝)」、BtoBの「Alibaba.com」があり、そのシェアは70%以上に達する。
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「中国におけるシェアはわずか1.4%で、同国の電子商取引サイトとしては5番目の規模」でもアマゾンは「世界で独り勝ち」と言えるのだろうか。アリババの中国での「シェアは70%以上に達する」とすれば、少なくとも中国では「独り勝ち」と呼ぶにふさわしいのはアリババの方だ。
「中国は例外的に苦戦しているが、世界全体で見ればアマゾンの1人勝ち」と鈴木副編集長は考えたのかもしれない。しかし、これも怪しい。朝日新聞は2016年5月6日付の「アリババ、流通額51兆円 ウォルマート超え世界最大に」という記事の中身を見ておこう。
【朝日新聞の記事】
中国のネット通販最大手、アリババ・グループが5日発表した2016年3月期の決算によると、傘下のサイトで売り買いされた流通総額は前年比27%増の4850億ドル(約51・9兆円)だった。米小売り最大手ウォルマート・ストアーズの16年1月期の売上高4821億ドルを上回り、初めて「世界最大の流通企業」となった。
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流通総額で比べるのが適当かどうかは議論があるだろうが、アマゾンが「世界で独り勝ち」していて、「世界最大の流通企業」であるアリババは足元にも及ばないと見なすのは無理がある。日経ビジネスの記事は出発点から問題を抱えているのではないか。
この記事では、急成長したアマゾンの「強大なパワーに対し、世界各地で警戒感が高まっている」として、「ドイツではストライキが発生。日本でも外部の労働組合の支援で、昨秋、労組が結成されている」といった動きを紹介している。
そこから鈴木副編集長が導き出したのは「GMのような大企業が手放しで尊敬された時代は去り、社会の目は厳しくなるばかり。(アマゾンも)綻びを放置すれば、思わぬ落とし穴にはまる」という何の捻りもない結論だ。
簡単に言えば「急成長してきたアマゾンも世界各地で色々と摩擦を起こしてるんで、気を付けないと…」という話だ。異論はないが、副編集長という立場で「ニュースを突く」というコラムを執筆するのであれば、もう少し独自の視点が欲しい。
記事中の説明には、納得できないものもあった。例えばアマゾンについて鈴木副編集長は「買い物のスタイルを根底から変え」たと解説している。ネット通販が登場する以前にもカタログ通販などはあった。ネット通販が買い物のスタイルに変革をもたらしたのは確かだろうが、「根底から」は大げさではないか。
「GMのような大企業が手放しで尊敬された時代は去り」との説明も気になる。ここでGMが出てくるのは、記事の中で「ゼネラル・モーターズ(GM)にとってよいことは、米国にとってもよいことだ」という1950年代の同社トップの有名な発言を用いているからだ。
この当時は「大企業が手放しで尊敬された時代」だったのだろうか。ちなみに日本では、50年代に新日本窒素肥料(現在のチッソ)という大企業が水俣病問題を引き起こしている。全ての時代の雰囲気を知っているわけではないが、50年代以降に限っても、世界的に「大企業が手放しで尊敬された時代」はなかったと思える。
※日経ビジネスの記事への評価はD(問題あり)、鈴木哲也副編集長への評価も暫定でDとする。
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