2016年8月19日金曜日

根拠なき「知名度向上」で記事を作る日経 太真理子記者

ニュース記事には何らかの「材料」が必要だ。例えば「A社の新製品が販売好調」というテーマで記事を書くならば、A社の新製品の売り上げが大幅に伸びていると言える根拠が欠かせない。19日の日本経済新聞朝刊アジアBiz面に載った「リオ五輪採用で知名度向上 中国スポーツ衣料大手の361度国際」という記事の場合、「361度国際の知名度がどのぐらい上がっているのか」「それは何から読み取れるのか」との情報が不可欠だ。しかし、そうはなっていない。記事の全文を見てほしい。
熊本城(熊本市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

【北京=太真理子】中国のスポーツ衣料・用品大手、361度国際(361ディグリーズ・インターナショナル)の知名度が向上している。リオデジャネイロ五輪で公式ウエアサプライヤーになり、大会スタッフらが同社のウエアを着用しているためだ。五輪をテコにブランドイメージを高め、国内外での販売拡大につなげようとしている。

361度国際は2003年設立の新興メーカー。世界的な知名度は低く、同社の丁伍号総裁は「(今回の五輪を機に)ブラジルや世界のスポーツファンに商品とブランドを知らしめる」と意気込む。

格付け会社フィッチ・レーティングスによれば、中国国内のスポーツ衣料市場のシェアは独アディダスと米ナイキで計37%に対し、361度国際を含む国内勢は上位5社の合計でも28%。世界的に有名な欧米勢が優位に立っている。

香港市場に上場する361度国際の株価は、知名度上昇による販売拡大期待などから五輪前に比べ小高く推移している。もっとも一部のアナリストの間ではサプライヤー契約の費用対効果に疑問の声もある。

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筆者の太真理子記者は「361度国際(361ディグリーズ・インターナショナル)の知名度が向上している」と言い切っているが、どの程度の向上なのかは教えてくれない。知名度向上をどうやって確認したかも不明だ。これではニュース記事の体をなしていない。「一部のアナリストの間ではサプライヤー契約の費用対効果に疑問の声もある」との部分を除けば、ほぼ記事型広告だ。

香港市場に上場する361度国際の株価は、知名度上昇による販売拡大期待などから五輪前に比べ小高く推移している」との説明もほぼ意味がない。五輪が始まってかなり経つのに「小高く推移」ならば、株価への影響はほとんどないと見るべきだろう。そもそも「公式ウエアサプライヤー」に決まったのは五輪が始まるかなり前で、それが公表された直後に知名度向上への期待は株価に織り込まれるような気もするが…。

これだけ何の材料もないのに太真理子記者はなぜ「リオ五輪採用で知名度向上」を柱に据えて記事を書こうとしたのか理解に苦しむ。知名度に関しては記者自身にも「公式ウエアサプライヤーに選ばれたんだから上がっているはずだ」ぐらいの認識しかないだろう。

こういう記事が紙面を飾るのは記者だけの問題ではない。国際アジア部の担当デスクの責任も重い。まともなデスクであれば、一読しただけで「これはニュース記事の体をなしていない」と判断できるはずだ。この内容で問題なしとデスクも感じたのだとすれば、日経の病巣を取り除くのは至難と言える。

※記事の評価はD(問題あり)。太真理子記者への評価も暫定でDとする。

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