2016年7月30日土曜日

やる気も工夫も見えない日経「九州消費者物価 横ばい」

30日の日本経済新聞 朝刊九州経済面に載った「九州消費者物価 横ばい 6月 電気・ガソリン下落影響」という記事は完成度が低かった。これを書いた記者が技術的に未熟なのは間違いないが、きちんとした記事に仕上げようというやる気も伝わってこない。どう工夫すべきか記者(おそらく西部支社の編集部所属)に助言してみたい。
キャナルシティ博多(福岡市博多区)
          ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

総務省が29日発表した6月の九州7県の消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数で前年同月比横ばいの103.7
だった。全国的に低下基調にある中、唯一低下しなかった。沖縄は0.1%低下の103.4。

原油安が続いており、電気代やガソリン代の下落が響いた

九州の指数は33カ月の連続上昇記録が16年3月に中断し、5月には37カ月ぶりに低下に転じていた。連続での低下にはならなかった。

北九州市が0.3%上昇と、九州の主な都市の中で最も上昇率が大きかった。熊本市が0.2%上昇と続いた。

最も下落率が大きかったのは鹿児島市で、0.4%低下の102.8だった。

項目別では、電気代が同6.7%、ガソリン代を含む「自動車等関係費」が3.8%、それぞれ低下した。


◆西部支社の記者への助言◆

横ばい」だと記事を書きづらいのは分かります。それを割り引いても、この記事は完成度が低すぎます。「こんな記事にカネを払ってもらって申し訳ない」と考えてください。担当デスクにも責任がありますが、筆者である記者の責任は重いと言えます。

記事を書く上では「何に焦点を絞るのか」をまず考えてましょう。今回の場合、「全国的に低下基調にある中、(九州の消費者物価は)唯一低下しなかった」のであれば、それが有力な候補となります。しかし、記事では「なぜ九州の物価の基調が相対的に強いのか」に全く触れていません。九州経済面の記事ですから、読者の関心も高いはずです。なのに、「原油安が続いており、電気代やガソリン代の下落が響いた」としか書いていません。

唯一低下しなかった」に焦点を絞るのではなく、「横ばい」について書くという選択ももちろんあります。今回はそうしたのかもしれません。だとしたら「原油安が続いており、電気代やガソリン代の下落が響いた」では説明になっていません。「○○は下落したが、××などの上昇で相殺された」といった書き方にすべきです。「5月には37カ月ぶりに低下に転じていた」のに、6月は横ばいになったのであれば、どちらかと言えば上昇要因に重心を置いて記事を書くべきでしょう。

記事には九州の都市別の数表が載っています。この表があれば「北九州市が0.3%上昇と、九州の主な都市の中で最も上昇率が大きかった。熊本市が0.2%上昇と続いた。最も下落率が大きかったのは鹿児島市で、0.4%低下の102.8だった」とのくだりは不要です。表を見れば分かります。「限られたスペースの中で読者により多くの情報を届けたい」と心がけて記事を書いていれば、こういう作りにはしないはずです。

総務省の発表資料を見て、そこに出てくる情報を適当に選んで記事にして終わり--。そんな姿勢が今回の記事には透けて見えます。「九州の消費者物価に関して6月のポイントはなんだろう」「どこを掘り下げれば読者に関心を持ってもらえるだろうか」などと考えましたか。そういう意識があれば、追加で取材して専門家のコメントを取るといった手間をかけようと思えたかもしれません。

安易に記事を書いても日経のデスクは原稿を通してくれるのでしょう。しかし、そこに甘えていれば書き手としての成長はありません。今のままでよいのか、これを機にじっくり考えてみてください。


※記事の評価はD(問題あり)。

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