2016年5月8日日曜日

冒頭から苦しい日経ビジネス「強い会社は会議がない」

19ページに及ぶ特集の冒頭部分でいきなり不安になった。日経ビジネス5月9日号の特集「強い会社は会議がない~即断即決の極意」では、「マイナス金利の導入」「ISの大規模テロ」「パナマ文書の漏洩」を2016年に起きた「予測不能な出来事」に挙げている。しかし、これらを以て現状を「入念にリスクを予測しても、想定を超える事態が出現する環境」と断定されても、全く納得できない。まずは特集の前文を見てみよう。
靖国神社(東京都千代田区)※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

マイナス金利の導入、ISの大規模テロ、パナマ文書の漏洩…。2016年も、予測不能な出来事が起こり続けている。入念にリスクを予測しても、想定を超える事態が出現する環境では、従来型の合議的意思決定はほぼ意味をなさない。アイデアがあれば実行し見込みがあれば突き進み、なければ朝令暮改で撤退する--。不確実な時代に生き残れるのは、そんなスピード経営を極めた企業だけだ。先進企業の即断即決を取材した。強い会社はもう、会議なんてしない

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マイナス金利については欧州で導入済みであり、16年になって日銀が追随したからといって「予測不能な出来事」とは言えない。実際に導入前から追加緩和策の候補として挙がっていた。日銀の黒田東彦総裁が1月に「現時点でマイナス金利を具体的に考えているということはない」とコメントしたために、導入公表時にはサプライズとなったが、基本的には想定されていた政策だ。

ISの大規模テロ」に関しては、昨年11月のパリでの同時テロを受けて特に欧州で警戒感が強かったはずだ。16年に入ってベルギーで大規模なテロが起きた時に、筆者らは「まさかISがベルギーでテロを起こすとは…」と驚愕したのだろうか。だとしたら時事問題に疎すぎる。

パナマ文書の漏洩」も十分にあり得ることだ。企業から個人情報が流出したりといった事例が過去にも多数あったのに「パナマの法律事務所だけは安全」とでも筆者らは信じていたのだろうか。

特集のPART1からPART3まで色々とツッコミどころはあるのだが、長くなるので割愛する。ただ、「強い会社はもう、会議なんてしない」について1つだけ注文を付けたい。筆者らは自分たちの取り組みをなぜ語らないのか。

強い会社は会議がない」という特集を組んだのだから、日経BP社全体ではともかく日経ビジネス編集部では基本的に会議がないはずだ。雑誌の編集部で会議がほとんどないとすれば、非常に興味深い。それでどうやって雑誌を作っているのか、以前は会議が多かったとすれば会議が減ってどんな効果を実感したのか--。

そんな実体験に基づいて特集を作れば、説得力が増したはずだ。しかし、特集を最後まで読んでもそうした記述は見当たらない。となると、「会議をなくせとか言っているのに、自分たちは会議だらけなんじゃないの」と疑いたくなってしまう。


※特集の評価はD(問題あり)。書き手については、宗像誠之記者と西雄大記者を暫定でDとし、齊藤美保記者への評価をDで確定させる。

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