2016年4月9日土曜日

日経ビジネス篠原匡記者の市場関連記事に要注意(1)

日経ビジネスの篠原匡記者(ニューヨーク支局)が書く市場関連記事には気を付けた方がいい。たぶん、あまり市場の仕組みを理解していない。4月11日号の「時事深層~市場は次の下落に身構える」を読む限り、そう判断するしかない。記事のあちこちから素人臭さが漂ってくる。その具体的な内容を見ていこう。

靖国神社の桜(東京地千代田区)※写真と本文は無関係です
◎「最安値」の意味分かってる?

【日経ビジネスの記事】

2月11日にWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物市場で1バレル26.21ドルの最安値をつけた原油相場。だが、その後は底打ち感が広がり、3月上旬以降は1バレル30ドル台半ばから後半で推移している。

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注釈を付けずに「最安値」と言えば、「史上最安値」と受け取るのが常識だ。WTIは1990年代まで20ドルを下回ることが珍しくなかったので「26.21ドル」は史上最安値ではもちろんない。「今年の最安値」とか「リーマン・ショック後の最安値」といった表現ならば問題ないが、記事のような書き方だと厳しく言えば間違いだ。

原油先物市場で1バレル26.21ドルの最安値をつけた原油相場」と「原油」を繰り返す書き方も素人っぽいし、「1バレル」は最初に入れたら、その後は省略しても問題ない。以下に改善例を示してみる。どちらが「プロっぽい」か比べてみてほしい。

【改善例】

2月11日にWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物相場は1バレル26.21ドルの最安値を付けた。だが、その後は底打ち感が広がり、3月上旬以降は30ドル台半ばから後半で推移している。

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◎日経平均株価は「国」?

【日経ビジネスの記事】

中国の上海総合指数や日経平均株価のように戻りが遅れている国もあるが、国際金融協会(IIF)によれば、昨年5月から今年2月までに20%下落した世界の株式市場は、2月以降、その半分近くを戻したという。

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これは日本語の使い方の問題だが、上記のような書き方だと「上海総合指数」や「日経平均株価」が「」になってしまう。例えば「中国の上海総合指数や日経平均株価のように戻りが遅れている場合もある」と直せば問題は解決する。

◎金は安全資産の代表?

【日経ビジネスの記事】

安全資産の代表例である金と株価の動きにも、市場の脆弱性が垣間見える。

世界的に株式市場が大混乱に陥った1月以降、金のスポット価格は20%近く上昇した。ところが、原油や株式などのリスク資産が底を打った2月11日を境にしても、金は1200ドル台と最近の高値圏を維持している。

通常、金はリスク資産が上昇すれば下落する。今の金高騰の背景には日本や欧州で導入されているマイナス金利の影響もあるが、金とリスク資産のサイクルが崩れているのは、投資家が現在の市場を信用していないということを示唆している。

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「金=安全資産」という前提で書いてある記事は基本的に信用すべきではない。例えば、金融資産の9割を国債で運用している人が「同じ安全資産だから」という理由で国債を全て金に振り替えたらどうなるだろうか。確実にリスクは高まる。金投資を勧めたい業界関係者が「金は安全資産」と強調するせいか、そう書いている記事も多いが、間違いだと考えた方がいい。

もちろん、「安全資産=信用リスクのない資産」と定義してしまえば、「金は安全資産」と言えなくもない。しかし、その場合は原油も「安全資産」に分類すべきだ。篠原記者は「金=安全資産」「原油=リスク資産」としているが、この分け方はかなり苦しい。「金には通貨としての役割も…」などとあれこれ理屈は付けられるかもしれない。しかし、普通の投資家にとって「金=安全資産」との認識にメリットはない。金に投資するならば「かなりリスクがある投資対象だ」との覚悟が欲しい。

この記事には他にも問題を感じた。残りは(2)で述べる。

※(2)へ続く。

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