2016年3月22日火曜日

投資の「カモ」育てる日経ビジネス杉原淳一記者の記事(3)

日経ビジネス3月21日号の「スペシャルリポート~もう『カモ』とは呼ばせない マイナス金利下の投信運用術」という記事中には、「マイナス金利時代の2000万円、私ならこう運用する」とのタイトルでセゾン投信社長の中野晴啓氏が私見を語っているコラムがある。これに関して、問題点の指摘を続けたい。

キャナルシティ博多(福岡市博多区) ※写真と本文は無関係です
このコラムで特に気になったのが以下のくだりだ。

【日経ビジネスの記事】

マイナス金利時代に入ったことで、将来的なインフレーションは意識せざるを得ない。それでも日本のマクロ経済が成長軌道を取り戻すとは限らず、日本株の運用はインデックスが決して万能とは言えないと考えている。そこで、日本株ファンドは厳しい銘柄選別を前提とした資産構成のできるアクティブ型を選ぶ。

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まず「マイナス金利時代に入ったことで、将来的なインフレーションは意識せざるを得ない」が謎だ。「極端な金融緩和はインフレを招きやすい」とは言えるだろうが、マイナス金利政策の導入前から、これでもかというほど金融緩和は進んでいる。マイナス金利政策が始まったからと言って、インフレに対する意識を変える必要はないはずだ。

「低成長下でのインフレを意識する必要がある。その場合、日本株ファンドはインデックス型ではなくアクティブ型が好ましい」と中野氏は考えているようだが、その理由がまた奇妙だ。「インデックス型も万能ではないからアクティブ型を選びましょう」と言われて納得できるだろうか。万能ではないのはアクティブ型も同じだ。ならば、両者の長所や短所を比較した上で、どちらが好ましいかを判断すべきだろう。

例えば、「住むのは賃貸か持ち家か」を考える時に「賃貸も万能とは言えないので持ち家を選びましょう」という助言は役に立つだろうか。

アクティブ型について「厳しい銘柄選別を前提とした資産構成のできる」ものを選ぶべきだと説いているのも、役にも立たない助言だ。「ウチのファンドはいい加減な銘柄選別しかしてませんよ」と教えてくれる運用会社は皆無だろう。

仮に「厳しい銘柄選別=低成長下のインフレ局面でも市場平均を上回るパフォーマンスを確実に実現してくれる銘柄の選別」だとすると、そんな選別をしてくれるファンドを事前に探し出す方法は基本的にない(あるなら教えてほしい)。

ここまでかなり厳しく記事を論評してきた。ただ、記事の中には「ファンドラップに注意」「『回転』は結局、損になる」といった有用な話も入っている。それを大幅に上回って問題点が多かったのが悔やまれる。


※記事の評価はD(問題あり)。杉原淳一記者への評価もDを据え置く。杉原記者に関しては「『個人向け国債』を誤解? 日経ビジネス杉原淳一記者」も参照してほしい。

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