◎なぜ「100年後」?
東京都庁(東京都新宿区) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
昨年11月11日。米東部時間の午前9時半、通信回線を介してニューヨーク証券取引所の取引開始を告げる鐘を鳴らしたのは、約1万1千キロメートル離れた北京にいたアリババ集団会長、馬雲(ジャック・マー、51)だった。
「100年後にまた鐘を鳴らしてほしい」。NY証取社長のトーマス・ファーリー(40)の激励に馬が応じた。「我々のサービスを通じて世界の変革に貢献したい」
数字の「1」が並ぶこの日を中国では「独身の日」と呼び、一大商戦となる。当日のアリババの電子商取引(EC)サイトの取引額は912億元(約1兆7千億円)。カンボジアの国内総生産(GDP)に匹敵する。
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NY証取社長の「100年後にまた鐘を鳴らしてほしい」というコメントが謎だ。昨年11月に鐘を鳴らした馬雲氏が100年後に生きていないのは自明なのに、なぜ「100年後」なのか。例えば「111年後」ならば「1並び」で理解できる。しかし「100年後」では何のことか分からない。前後のやり取りを見れば「100年後」の理由が分かるのだろうが…。
「カンボジアの国内総生産(GDP)に匹敵する」という比較もピンと来ない。例えば「韓国のGDPに匹敵する」だったら素直に「すごいな」と思えるが、「カンボジアのGDP」はいかにも小さそうだ。アリババの数字は1日のものなので、年間の数字であるGDPと比べるのも好ましくない。この辺りはもう少し工夫すべきだ。
◎「中国勢への異端視」で株価下落?
【日経の記事】
インターネットで取引相手を見つけたい企業・個人を吸い寄せ、創業16年で年4億人が利用する仕組みをつくり上げた馬。英語教師から身を起こした姿は「チャイナ・ドリーム」を体現する。14年9月のNY上場では史上最大の250億ドル(約3兆円)を資金調達した。
「中国株式会社」の顔となった馬に米市場は洗礼を浴びせた。上場後に1株119ドルをつけた株価は1年後、一時60ドル台まで下落。米投資情報誌バロンズは「さらに5割下がる可能性がある」と警告し、アリババは「根拠がない」と抗議した。
背景にあるのは中国勢への異端視だ。閉鎖的な13億人市場でアマゾン・ドット・コムのような米国のサービスをまねただけ――。売上高の9割が国内という内弁慶ぶりこそが中国経済の減速で株が売られた原因だった。
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今回の記事で最も気になったのが「(アリババの株価下落の)背景にあるのは中国勢への異端視だ」という説明だ。「上場後に1株119ドルをつけた株価は1年後、一時60ドル台まで下落」したらしい。その原因が「中国勢への異端視」ならば、「119ドル」という高値がなぜ実現したのか。119ドルを付けた時点では異端視されておらず、その後に異端視が始まったと考えれば辻褄は合う。しかし、記事にそうした説明はないし、常識的にも考えにくい。
「売上高の9割が国内という内弁慶ぶり」も上場前から分かっていた話だろう。記事では「なぜ1年で119ドルから60ドル台まで下落したのか」をまともに説明できていない。
ついでに言うと、「株価」に言及する場合に「1株の価格」なのは大前提だ。「上場後に1株119ドルをつけた株価」のくだりで「1株」は必要ない。
この記事には他にも問題を感じた。それらについては(2)で述べる。
※(2)へ続く。
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