2016年1月17日日曜日

昨年11月の対談を今頃載せる日経ビジネスの不見識

読者を馬鹿にしているとしか思えない対談記事が日経ビジネス1月18日号に載っていた。ゴールドマン・サックス証券チーフ・エコノミストの馬場直彦氏とBNPパリバ証券投資本部長の中空麻奈氏が2016年の世界経済について語り合うという内容だが、両氏に罪はない。むしろ被害者だ。

中央公園(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です
馬場氏は「専門家が読み合う~世界経済は薄日が差すか、まだら模様に」という記事の中で「米原油先物ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)で1バレル40ドル前後という状況があと数カ月ぐらい続くとみています」と発言している。年明け後に30ドルを割り込むところまで下げているのに「あと数カ月は40ドル前後で推移するでしょう」と予測するのは、専門家として致命的。「現状を把握できていません」と公言しているようなものだ。

なぜこんな「珍予測」が紙面に出てしまったのか。記事の末尾に「日経ビジネス『徹底予測フォーラム2016』での対談や講演を編集しました」と書いてある。「これが怪しそうだな」と思って調べてみると、フォーラムの開催は2015年11月25日。つまり馬場氏の予測は2カ月近く前のものだ。

そう考えると、記事にはおかしな点が他にもある。聞き手の清水崇史記者は「日本の実体経済に回復の実感がない中で株高、円安、金利低下が進んでいます。乖離状態はいつまで続きますか」と質問している。金利低下はいいとしても、年明け後は株安で円高と見るべきだ。これも昨年11月の話ならば合点が行く(「乖離」があるかどうかは疑問も残るが、ここでは論じない)。

今回の問題にはどう対処すればよかったのか。いくつか選択肢を検討してみよう。

◎掲載日を早める

これがベストだろう。ファーラム開催から間を置かずに掲載していれば、記事の内容が同じでも問題は生じなかったはずだ。


◎問題部分を削る

1月18日号での掲載が前提条件ならばどうか。時間の経過に伴い陳腐化した部分を除いて構成すれば、問題は生じない。ただし、対談の根幹部分だと、削れば済むという話ではなくなる。


◎注記を付ける

どうしても陳腐化した内容を載せる必要がある場合、※印などを付けて「昨年11月25日時点での見解です」などと読者に知らせる手もある。今回も記事の末尾にフォーラムの開催日を入れておけば「昨年11月時点での予測だとは読者には明示している」と弁明できる。

ただ、馬場氏の予測は既に「外れ」が明確になっている。それをわざわざ1月18日号で読者にさらす必要があるのかという問題はある。しかし、注記なしで「現状認識もきちんとできていない人」と思わせるよりは好ましい。

※記事の評価はD(問題あり)。聞き手の清水崇史記者が編集を担当したとの前提で、同記者への評価も暫定Dとする。

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