東京・西新宿のビル ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
ただ、足元では「原油安によるリスクオフで『安全資産の金』が買われた」(マーケットアナリストの豊島逸夫氏)。来年の利上げペースは緩やかになるとみるファンドは金を「安全資産」として売買する姿勢を強めた。
中略) 中国でも株安や為替の人民元安基調を背景に、安全資産として金を選択する投資家が増えた。上海黄金交易所の保管庫からは次々に金塊が引き出されている。
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「安全資産」をどう定義するかにもよるが、「元本割れのリスクが極めて小さい資産」という一般的な定義に従えば、金が安全資産でないのは明らかだ。金を「安全資産」として取り上げるのであれば、どういう意味で「安全」なのか説明が欲しい。
豊島逸夫氏のように金投資を薦める立場の市場関係者が「金は安全資産」と訴えるのは分かるし、責めるつもりもない。しかし、日経の記者はそれを鵜呑みにしてはダメだ。記事を見る限り、筒井記者は市場関係者の「金=安全資産」との刷り込みに何の疑いもなく染まっているのだろう。
◎ドル高は強材料?
【日経の記事】
金相場が下げ止まった。保有していても利息がつかない金は米国の政策金利の引き上げが決まったことで、2年間続いた下げ傾向が一服し、先物市場で買い戻される場面が目立ってきた。インド市場で現物の買いが上向くなど、雰囲気が変わった。ただ、ドル高基調を背景に相場が上昇気流に乗るという見方は少なく、金市場は端境期に差しかかろうとしている。
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「ドル高基調を背景に相場が上昇気流に乗るという見方は少なく」と書いてあったら、ドル高は金相場にとって強材料だろうか。それとも弱材料だろうか。普通に考えれば強材料だと思える。しかし、記事の最後の方に「ドル高基調は金相場の上値を抑える」と書いてあるので、実際は弱材料のようだ。
筒井記者は「相場が上昇気流に乗るという見方はドル高基調の影響で少なく」などと言いたかったのだろう。記事を書く上での基礎的な技術が身に付いていないので、読者に誤解を与える拙い書き方になってしまっている。
記事とグラフが合っていないのも気になる。記事では「2年間続いた下げ傾向が一服」と書いているのに、金相場のグラフは今年10月以降のもので、10月前半に上昇してから下げに転じる展開になっている。過去2年間のグラフにすれば「2年間続いた下げ傾向が一服」と読者も実感できたはずだ。この辺りは配慮が欠けている。
◎意味のない結論
【日経の記事】
ただ、ドル高基調は金相場の上値を抑える。金融機関などのアナリストがまとめた予想でも、16年の上値は1200ドル程度が大勢で、まだ慎重さが残る。ひとまず金市場で売りの宴は収束の気配だ。年が明け、次の局面が始まる可能性もある。
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市場関連記事で使っている「可能性がある」には、ほとんど意味がない。上記の「年が明け、次の局面が始まる可能性もある」もそうだ。自分が筆者ならば、もっと明確に断定できる。「年が明け、次の局面が始まる」と言い切ってもいい。“予言”が外れる心配はないだろう。
年が明ければ次の局面が始まるのは当たり前だ。それにわざわざ「可能性がある」を付ける意図が理解できない。しかも、これは記事の結論部分だ。こんな当たり前のことを訴えるために、記事中で言葉を費やしてきたのか。筒井記者には、そこをしっかり考えてほしい。
※記事の評価はD(問題あり)。筒井恒記者の評価も暫定でDとする。
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