記事の最初の方は以下のようになっている。
ビューホテル平成(福岡県朝倉市)からの眺め ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングス(GHD)は2016年9月に経営統合することで合意した。株式交換比率やコンビニエンスストアの店名の一本化など統合条件を見ると、中部・東海地方の雄だったユニーGHDがファミマにのみ込まれた印象が強い。
ユニーGHDは小売業界ではある意味「先駆者」だ。イオンやセブン&アイ・ホールディングスなど日経MJの小売業14年度ランキング上位30社を見ると、7割以上の企業に共通点がある。それは今も創業者か創業一族、あるいは創業者と同世代の経営者が第一線にいるということだ。
ユニーGHDは名古屋の履物店「西川屋」が前身。1971年に呉服店を営んでいた「ほていや」と合併し、ユニーが誕生した。76年から西川屋の三男だった西川俊男氏が社長になり、90年まで続けた。91年からは20年以上にわたり創業一族の手から離れ、サラリーマン経営者が6代続いている。成長力が低下した百貨店などを除くと、総合小売りの全国チェーンとしては異例だ。
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中村編集委員としては、創業家が経営から手を引いているユニーに関して「総合小売りの全国チェーンとしては異例」だと、どうしても言いたかったのだろう。百貨店を除外して考えるならば、そもそも総合小売りの全国チェーンは3つしかない。ウォルマート傘下の西友を入れても4つだ。うち1社がサラリーマン社長で、残りが同族経営だとしても、「異例」と言うほどではない。
しかも、何とか「異例」に仕立て上げるために「創業者と同世代の経営者が第一線にいる」場合も“創業者系”の企業に含めたのだろう。これはセブン&アイを念頭に置いているはずだ。同社の最高権力者である鈴木敏文氏が創業者と「同世代」かどうか微妙だが、仮に同世代だとしても、ユニーと同じ「非同族経営」に含める方が自然だ。
そうなると明確な「創業者系」はイオンだけになり、ユニーに異例さはなくなる。それでは話が成立しないと考えて今回の奇妙な括りを採用したのではないか。しかし、括り方に無理があるので、記事自体の説得力を失わせてしまっている。
記事の結論部分にも、やはり無理を感じた。
【日経の記事】
いずれにしても大型チェーンから地方のチェーンまで、今後10年で世代交代が進むのは間違いない。日本M&Aセンターの業界再編部の渡部恒郎副部長は「イノベーションとは事業コンセプトを変えること。創業者以外でそれができる人は少ない」と指摘する。
この結果、後継者不在から単独成長を諦め、「あらゆる業界で4社に集約される」(渡部氏)。革新を断行するか、再編か。余力を残し、決断したユニーGHDの動きは全国の流通企業に選択を突きつけている。
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まず、なぜ「10年」なのか謎だ。「今後10年で世代交代が進むのは間違いない」のはその通りだろう。しかし、それは「今後5年」でも「今後20年」でも同じことが言える。なぜ「10年」と具体的な数字を出したのか、記事中には何の手掛かりもない。
渡部氏の「あらゆる業界で4社に集約される」という信用性の低いコメントを使っているのも感心しない。コメントでは時期を明示していないが、例えば10年後に「あらゆる業界で4社に集約される」状況が実現しているだろうか。10年後に日本の外食業界が4社に集約される可能性があるだろうか。自信を持って「あり得ない」と保証できる。流通以外で考えてみよう。鉄道業界では現状でJRだけでも4社を上回る。JRは1社にまとめて、私鉄は関東、関西、それ以外で1社ずつ。これでやっと4社になる。
統制経済体制にでも移行しない限り、いずれも実現は無理だ。それは中村編集委員にも分かるはずなのに、なぜこんなコメントを使ってしまったのか。強引な話を強引にまとめるために、無理のあるコメントを使ってしまったのならば、書き手として資質を疑われても仕方がない。
※今回の記事と中村直文編集委員への評価はいずれもD(問題あり)とする。
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