大濠公園(福岡市中央区) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
3日のダウ工業株30種平均は続伸し、1万8000ドルの大台が視野に入ってきた。10月の米新車販売台数が前年同月比で13.6%増えたとの発表を受け、米自動車市場の堅調さが相場を支える材料の一つとなった。ところが自動車とつながりが深いにもかかわらず株価が一向に上向かない業種がある。アルミだ。
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最初の段落で「株価が一向に上向かない業種がある。アルミだ」と書いているが、「アルミ」という業種はあるのだろうか。業種の分類方法にも色々あるとはいえ、一般的には「非鉄」か「素材」だろう。個人的には「アルミ業界」はあっても「アルミ」という業種はない気がする。
◎「10月に年内に閉鎖」?
【日経の記事】
中堅のセンチュリー・アルミニウムも10月にサウスカロライナ州にある製錬所を年内に閉鎖し、600人近くを削減する可能性があると発表している。そうなれば米国に残るアルミ製錬所は4つになる。
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「10月にサウスカロライナ州にある製錬所を年内に閉鎖」という部分が非常に読みにくい。「10月に~発表している」と言いたいのだろう。しかし、稚拙な書き方ゆえに読者へ余計なストレスを与えてしまっている。「米国に残るアルミ製錬所は4つになる」に関しても、センチュリー・アルミニウムの話なのか、業界全体の話なのか明示した方が親切だ。文脈から判断すると後者のようなので、その前提で改善例を示しておく。
【改善例】
中堅のセンチュリー・アルミニウムも「サウスカロライナ州にある製錬所を年内に閉鎖し、600人近くを削減する可能性がある」と10月に発表している。そうなれば米国のアルミ製錬所は業界全体で4つになる。
◎「65%」だけでは何とも…
【日経の記事】
苦境を救うと期待されるのが航空機などの新分野だ。鉄の3分の1程度の重さのアルミは軽量化に役立つ。ボーイングは小型旅客機の「737」でアルミ材を採用。フォード・モーターも主力ピックアップトラック「F150」の骨格にアルミ合金を全面採用した。
成果は出てきた。「737」は1~9月期の出荷が前年同期比で6機多い126機と好調だ。フォードも10月に販売したピックアップトラックの65%がF150という。
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「フォードも10月に販売したピックアップトラックの65%がF150という」と言われても、それだけでは「成果が出てきた」かどうか何とも言えない。例えば、8月は「75%」で9月は「70%」だったらどうか。あるいは比率は「65%」でも、販売台数が前年同月比10%減だったらどうか。過去との比較もせずに「65%」という数字だけ持ち出されると、「実は大したことないのでは?」と疑いたくなる。
◎いきなり「川下事業」と言われても…
【日経の記事】
だが、こうした明るいニュースも投資家の評価には結びついていない。ボーイングやフォードと取引するアルコアの株価は1月を基準とすると約40%下落した。同期間にS&P500種株価指数は2%強の上昇だ。アルコアが10月8日に発表した7~9月期決算は、純利益が前年同期比7割減の4400万ドル(約53億円)と振るわない。
不振の理由には川下事業特有の利幅の薄さもある。特に航空機や車のように製品の寿命が5~10年に及ぶ分野では、長期の取引が約束されるかわりに価格は低く留め置かれる。
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日経の過去の記事によると、アルコアには「ボーキサイト採掘やアルミ生産を手がける川上事業と、航空機向け部材などを含む川下の加工品事業」があるらしい。しかし、アルコアがそういう分け方をしているとは、ほとんどの読者は知らないだろう。なのに注釈なしに「川下事業」と書かれても困る。「自分が分かっていることは読者も分かっているはず」との思い込みは排してほしい。
ついでにもう1つ。「株価は1月を基準とすると約40%下落した」という書き方は薦めない。これだと年始と比べているのか1月末と比べているのか、あるいは1月の月間平均と比べているのか、よく分からない。
◎「追い風に翻弄される」?
【日経の記事】
自動車など伝統的な製造業が一国の経済で重視されるのは取引の裾野が広いからだ。だが、アルミは業績も株価も自動車や航空機の恩恵を十分に受けているとは言いがたい。むしろ中国発の逆風が米国内の追い風に勝っている感がある。米企業に吹き付ける2つの風。翻弄されるのはアルミだけではないだろう。
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「逆風」に「翻弄される」のは分かる。しかし、中西記者は「米国内の追い風」にも「翻弄される」と書いている。あり得ないとは言わないが、例えとしてはしっくり来ない。
※こうやって見てくると、この記事はやはり問題が多い。記事の評価はD(問題あり)で、中西豊紀記者の評価も暫定でDとする。中西記者には「このままではダメだ」という強い危機感を持ってほしい。
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