最も問題が大きいと思えたのは「国際分散投資は暴落相場を乗り越えた ITバブル崩壊、リーマンショックで起きたこと」という記事(62、63ページ)だ。そこでは以下のように書いている。
マーストリヒト(オランダ)の中心部 ※写真と本文は無関係です |
【東洋経済の記事】
実際にこうした各資産を組み込んだポートフォリオでのパフォーマンスを見たのが上図だ。案の定、国内株式だけのポートフォリオ(モデル4)の成績が最も悪く、海外株式や国内外の債券をバランスよく配分したポートフォリオ(モデル1)が最高の成績を示した。
変動幅もマイルドだ。モデル1はITバブル崩壊時に1割程度、リーマンショック時でも3割弱の下落にとどまった。
これを読むと、投資初心者ならば「海外株式や国内外の債券をバランスよく配分した方が値上がりするし、価格変動も少ないんだろう」と思ってしまうだろう。しかし、この記事のモデル設定は一種の「騙し」だ。「バランス重視型の成績が抜きんでる-各ポートフォリオの総合リターン-」というグラフを見ると、モデル設定は以下のようになっている。
モデル1=外国株式 外国債券 国内株式 国内債券 各25%
モデル2=外国債券 国内株式 各50%
モデル3=国内債券 国内株式 各50%
モデル4=国内株式 100%
この4つを比べてモデル1の運用成績が最も良かったならば「やはりバランス重視がいいな」と思うだろうか。見落としてはいけないのが、モデル1にだけ「外国株式」が入っていて、そのパフォーマンスは非常に高いということだ。外国株100%の「モデル5」を加えれば、運用成績トップはこのモデルになるだろう。だとすると必ずしも「バランス重視が良い」とは言えなくなる。
「変動幅もマイルド」と言い切っているのも引っかかる。グラフを見ると、4つのモデルの中でモデル1が最も変動率が小さいようには見えない。仮に最も小さいのならば、記事中で明示すべきだ。最小ではないのに「変動幅もマイルド」と書いている場合、説明に問題がある。
変動幅についても「国内債券100%」のモデルを追加すれば、ITバブル崩壊時やリーマンショック時の価格変動はモデル1~4より小さくなるはずだ。つまり「変動幅」についても「バランス重視型が良い」とは言い切れない。
このデータの出所は野村証券。野村が恣意的にモデルを設定して「バランス重視型が良い」と誘導したとしても責めるつもりはない。その意図を見抜いて読者に誤解を与えないように修正するのは記者の仕事だ。今回の特集を担当した西澤佑介、野村明弘の両記者がその役割をきちんと果たしたとは思えない。
他の問題点は(2)で指摘する。
※(2)へ続く。
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