2015年8月6日木曜日

古賀茂明氏の「甘さ」にあきれた エコノミスト「闘論席」(1)

マスコミ批判は悪くないし、どんどんやってほしい。しかし、古賀茂明氏がエコノミスト8月11・18日号に書いていた「闘論席」は無理のある批判だった。古賀氏は記事で「東芝の『粉飾』決算問題。マスコミ報道の『甘さ』には本当にあきれた」と訴えているが、むしろ古賀氏の批判の「甘さ」にあきれた。

まずは、エコノミスト編集部に送った問い合わせを見てほしい。

ユトレヒト(オランダ)のドム塔
    ※写真と本文は無関係です

【エコノミストへの問い合わせ】

週刊エコノミスト 担当者様

8月11・18日号の「闘論席」についてお尋ねします。筆者の古賀茂明氏は記事中で東芝の会計問題に関するマスコミ報道を批判し、「繰り延べ税金資産と東芝が2006年に買収した米ウェスチングハウスの問題」に言及しています。

古賀氏によると「前者は2600億円規模、後者は3000億円規模の特別損失につながりかねないが、大手メディアはその報道に二の足を踏む」状況のようです。しかし、毎日新聞は7月28日付でこの問題を報道しています。どこまでを「大手メディア」とするかは微妙ですが、週刊ダイヤモンドも8月1日号の記事でウェスチングハウスの減損リスクを大きく取り上げていました。

「大手メディアの全てがウェスチングハウスの減損問題を報じることに二の足を踏んでいる」と受け取れる書き方は不適切ではありませんか。古賀氏は毎日新聞の記事が出る前に出稿したのかもしれませんが、日程的には修正が可能だったと思えます。

記事の記述に問題はないのか、編集部としての見解を教えてください。お忙しいとは思いますが、早めの対応をお願いします。


これに対して編集部から以下の回答があった。


【エコノミストの回答】

いつも弊誌『週刊エコノミスト』をご愛読いただき、本当にありがとうございます。弊誌8月11・18日合併号に掲載した古賀茂明氏の「闘論席」につきお尋ねをいただいた件に関し、編集部の見解をお伝え申し上げます。

古賀氏は「闘論席」の中で、「繰り延べ税金資産と東芝が2006年に買収した米ウェスチングハウスの原発部門の「のれん代」の問題だ。全社は2600億円規模、後者は3000億円規模の特別損失につながりかねないが、大手メディアはその報道に二の足を踏む。」と記述しています。

編集部としましては、古賀氏は東芝の多額の損失計上の可能性に関する大手メディアの報道が全体としてあまりに少ないことを問題提起し、それを「二の足を踏む」と表現したものと考えています。

東芝の2014年3月期決算は8月中に提出されますが、不正会計のみならず繰り延べ税金資産とウェスチングハウスの会計処理については、今後も問題になりうる可能性があり、この点の指摘は妥当性があると考えているところです。

また、古賀氏が「二の足を踏む」という表現を用いている点について、本稿中で古賀氏自身が独自に聞いたテレビ局関係者の話などを傍証に、メディアと東芝の関係についても疑念を持っていることを示しています。メディアと東芝の関係は編集部としても確たる事実を知りえませんが、古賀氏の記述は自ら得た情報に基づき、その裏側を筆者として推測しているに過ぎず、表現の方法として問題はないものと考えています。

今後とも弊誌を変わらずご愛読いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。


まず、丁寧な回答が返ってきたことを評価したい。結論としては「記事に問題なし」との内容になっている。「大手メディアはその報道に二の足を踏む」とは、「大手メディアはその報道があまりに少ない」という意味らしい。古賀氏の書き方は「大手メディアは減損などの問題を全く報じていない」という印象を与えるものではあるが、「全く報じていない」と断定はしていない。「『二の足を踏む』との表現で、報道があまりに少ないことを問題提起した」との弁明は一応成立する。「毎日などがこの問題を報じているのだから、『大手メディアは二の足を踏む』という古賀氏の書き方は不適切」との考えは変わらないが、編集部の見解も否定はしない。

今回の記事に関しては、他にも問題を感じた。(2)でさらに指摘を続ける。

※(2)へ続く。

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