ルクセンブルクのギヨーム2世広場に建つBierger Center ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
日銀の大規模な金融緩和による歴史的な超低金利が長引くなかで、外貨投資を手がける人が一段と増えてきた。外貨預金に加え、最近は外国為替証拠金(FX)取引を始める例も目立つ。ただ外貨投資には思わぬ落とし穴が隠れており、慎重に運用することが大切だ。
落とし穴(1) マネーの収縮
世界的な金融緩和の下で円安相場が続いてきたが、今後は従来の為替予想が通用しなくなるかもしれない。米連邦準備理事会(FRB)が年内にも金融緩和から利上げへと政策を転換させる可能性が高まっているからだ。
米国が利上げに転じると、どうなるか。最も可能性が高いシナリオは、FRBが市場に流してきた大量のマネーがFRBに吸い戻され、投資先だった新興国の通貨が大幅に下落することだ。
円も新興国通貨に対して全面安傾向が続き、外貨で運用するだけで為替差益を得ることができた。だが新興国に流れていたマネーが米利上げを機に米国に戻れば、新興国通貨は対円でも大幅に下落する可能性が高い。しかも円の総合的な価値を示す実質実効為替レートは既に約40年ぶりの水準まで下がっており「さらに円安に振れていくことはありそうにない」(日銀の黒田東彦総裁)状況だ。
東京外国為替市場委員会によると、東京外為市場で取引される新興国通貨のうち、最も取引量が多い通貨は南アフリカランドだ。南アフリカは鉱物の輸出が多く、ランドは最近の国際商品市況の下落で「今後も下落リスクが高い」(邦銀ディーラー)。
同様に、先進国通貨の中でも鉱物や農産物の輸出が多いオーストラリアドルやニュージーランドドルも商品市況に影響を受けやすく、大幅下落のリスクが高い。
上記の内容に関して疑問点を列挙してみる。
◎「従来の為替予想が通用しなくなる」?
筆者の佐伯遼記者によると「世界的な金融緩和の下で円安相場が続いてきたが、今後は従来の為替予想が通用しなくなるかもしれない」そうだ。それは米国が利上げに転換する可能性が高まっているためらしい。
「従来の為替予想」が何を指すか明確ではないが「世界的な金融緩和の下では円安になる」という予想だと推測できる。世界的な金融緩和の下ではなぜ円安になるのか疑問が残るが、そういうものだと受け入れてみよう。だとすると「世界的な金融緩和の流れが止まれば円高」なのだろう。「米国の利上げ→円高」となりそうならば、「従来の為替予想」で通用するのではないか。
◎むしろ「明確なチャンス」では?
米国が利上げに転じると「新興国通貨は対円でも大幅に下落する可能性が高い」と佐伯記者は解説している。しかも「実質実効為替レートは既に約40年ぶりの水準まで下がっており『さらに円安に振れていくことはありそうにない』(日銀の黒田東彦総裁)状況」らしい。ならば「落とし穴」というより「なかなかない明確なチャンス」と言えるのではないか。利上げが決まったタイミングで新興国通貨を売れば高い確率で大きな利益が期待できる。しかも、読みが外れて円安に振れる可能性は非常に低そうなので「ローリスク・ハイリターン」の取引だ。
実際にそんな期待が持てるとは、もちろん思わない。しかし、記事の説明をそのまま信じれば「大チャンス」だ。「実際にローリスク・ハイリターンを期待できる」と佐伯記者が考えるのであれば、記事でその点をはっきり伝えてあげてほしい。「違う」と思うのならば、記事の説明に問題があるはずだ。
◎佐伯記者が無視しているもの
「米国が利上げに転じると、どうなるか。最も可能性が高いシナリオは、FRBが市場に流してきた大量のマネーがFRBに吸い戻され、投資先だった新興国の通貨が大幅に下落することだ」という説明の問題は「織り込み済み」を考慮していない点にある。米国の利上げが近いという情報は世界中で共有されている。つまり、利上げは現時点でもある程度織り込まれている。利上げが近づくにつれて、さらにその傾向が強まるはずだ。なので、実際に利上げに転じた時には、逆にドル安へと動く可能性も十分にある。
予想以上の利上げ幅だったりすれば、一気にドル高が進行する可能性ももちろんある。結局のところは「利上げに転じた後で為替相場がどう動くか」について明確なことは言いにくい。その点を頭に入れて、相場の予想をするのは構わない。しかし、佐伯記者の書き方からは「織り込み済み」を考慮している気配がうかがえない。
◎「市況が下落」?
※記事の評価はD(問題あり)、佐伯遼記者の評価も暫定でDとする。
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