2015年8月26日水曜日

無意味な結論 日経 田村正之編集委員「マネー底流潮流」

この内容なら記事にする意味はない。25日の日経夕刊マーケット・投資2面に 田村正之編集委員が書いた「マネー底流潮流~米利上げ、前回との違いは」は、訴えたいことがないのに文字を連ねたように思える記事だった。それが顕著に表れている結論部分から見ていこう。

ブリュッセル(ベルギー)の聖ミッシェル大聖堂
                ※写真と本文は無関係です
【日経の記事】  

日本株はどうなるのか。ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏は「昨年度の平均よりまだ円安なうえ、原油安は日本にプラス。足元の株価水準は長期的には割安」とみる。ただし業績を支える円安が崩れれば、悲観ムードが高まる可能性もある


市場関連記事で気になる表現の1つが「可能性がある」だ。これが出てきたら「あまり意味のないことを書いている」と思ってほぼ間違いない。上記の「業績を支える円安が崩れれば、悲観ムードが高まる可能性もある」はどうだろう。市場には、為替相場の動向にかかわらず「悲観ムードが高まる可能性」は常にある。「有害なものを摂取すれば、健康を害する可能性もある」という話と同じぐらい自明な説明で記事を終えられては、書き手として田村編集委員を高く評価する気になれない。

しかも、何を以って「円安が崩れる」と判断するのか不明だ。最近の円ドル相場を見ると「既に円安基調は崩れている」との見方も十分できる。田村編集委員が「まだ円安基調は続いている」と考えるならば、それはそれでいい。しかし、「悲観ムードが高まる可能性もある」為替相場の水準がどの程度なのかは言及すべきだ。

株価についても同様のことが言える。相場はすでに大きく下げているのか、そうではないのか。記事を読んでいると迷いが生じる。田村編集委員は以下のように書いている。


【日経の記事】

最大の懸念は利上げがもたらす米国の景気・株価リスクだ。過去、米利上げに伴う大きな株価下落は、利上げ開始後数年たち、政策金利がかなり上昇して長期金利に近い水準になった後に起きてきた。このため今回も「いずれ大きな株価下落が起きるとしても、まだ数年の余裕はある」というのが多数派の見方だ


この書き方だと「まだ大きな株価下落は起きていない」との印象を受ける。記事で言う「株価」の対象が米国株なのか世界全体の株式なのか明確ではないが、米国株であればダウ平均は前週だけで1000ドル超下げており、週明け後も下落した。これを「大きな株価下落ではない」と解釈するのは田村編集委員の自由だが、それならば「大きな株価下落」とはどの程度の下落なのか、記事中で明示してほしい。

例えば「今後2年間はダウ平均の大幅な下落は起きない」という予想は確実に“当たる”。「大幅な下落」の定義を事後に設定すれば「外れ」を回避できるからだ。もちろん、こんな予想に意味はない。だとすると「いずれ大きな株価下落が起きるとしても、まだ数年の余裕はある」との見方に何か意味があるだろうか。

※記事の評価はD(問題あり)、田村正之編集委員の評価もC(平均的)からDに引き下げる。

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