北海のビーチリゾート、スヘフェニンヘン(オランダ) ※写真と本文は無関係です |
「今後のご健闘をお祈りします」。そんな決まり文句から、大量に届く不採用通知が学生に「お祈りメール」と呼ばれ始めたのは遠い昔の話ではない。いまネットには学生向けに内定辞退の定型文が出回り、企業向けには「学生を辞退させないための内定者研修」も登場。企業と学生、片方が笑えばもう片方が泣く運命か。
新卒採用も労働市場の一部だが、誰かが得をすればそのぶん誰かが損をするのは、市場のあるべき姿ではない。持てる価値を交換し、取引の参加者全員が幸せになるのが本来の市場だ。化かし合いめいた短期決戦よりも、互いの素顔を日常の中で理解する。そんな、お見合いより恋愛結婚に近い採用に変えられないものか。
「誰かが得をすればそのぶん誰かが損をするのは、市場のあるべき姿ではない」という説明が引っかかった。この考えに基づけば、日経平均先物などの先物市場は「あるべき姿」から外れていることになる。日経平均先物の売買で誰かが利益を得るには、誰かの損失が必須であり、市場全体としてはゼロサムゲームとなる。だからと言って「あるべき姿ではない」とは思えないが…。
労働市場はゼロサムゲームではないが、応募人数が採用数を上回る場合、誰かの採用決定は裏返せば誰かの不採用決定となる。優秀なAさんを巡って数社が採用を争っている場合、どこかの会社が笑えばどこかの会社が泣くことになる。しかし、それは「市場のあるべき姿ではない」のか。むしろ最適なマッチングを目指す「あるべき姿」とも言える。
「化かし合いめいた短期決戦よりも、互いの素顔を日常の中で理解する。そんな、お見合いより恋愛結婚に近い採用に変えられないものか」と筆者は願っているようだ。それは悪い話ではないが、「取引の参加者全員が幸せになる」ことには結び付かないだろう。
「お見合いの後で交際を断られると不幸だが、失恋は辛くない」と多くの人が考えるならば別だが、恋愛結婚であっても、笑う人がいればその裏側に泣く人もいるはずだ。男女比のバランスが崩れた市場では男性と女性で「片方が笑えばもう片方が泣く運命」となる。これは見合い中心でも恋愛中心でも同じだろう。
新卒の就職活動が今のままで良いとは言わないが、「春秋」の嘆きに意味は感じられなかった。
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