2015年7月14日火曜日

「売る理由」を説明しない日経「ファンド、原油・金売る」

14日の日経朝刊マーケット総合2面に「ファンド、原油・金売る ~WTI買い越し残 低水準」という記事が出ている。これは相当ひどい。「投資ファンドが原油や金など国際商品の売り姿勢を強めている」と書き出してはみたものの、最後まで読んでも「売り姿勢を強めている理由」が分からない。強いて言えば「国際商品の先高観が後退」しているからだろうが、なぜ先高観が後退しているか説明はない。「原油価格には下値余地が大きい」という市場関係者のコメントを紹介しても、下値余地が大きいと判断している理由には触れないといった具合だ。明らかな欠陥記事と言える。

記事では以下のように書いている。


【日経の記事(全文)】
リエージュ(ベルギー)中心部に近いギユマン駅 ※写真と本文は無関係です

投資ファンドが原油や金など国際商品の売り姿勢を強めている。ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の買い越し残高は、約3カ月ぶりの低水準となった。国際商品の先高観が薄れる中、個人投資家も商品価格に連動する上場投資信託(ETF)から資金を逃避している。

米商品先物取引委員会(CFTC)によると、7日時点で投機筋によるWTIの買い越し残高は節目の30万枚(1枚1千バレル)を下回った。ピークだった5月下旬に比べ、15%少ない。金の買い越し残高も約1年半ぶりの低水準にある。

エモリキャピタルマネジメントの江守哲・代表取締役は「原油価格には下値余地が大きく、原油先物の売り持ち高を増やしている」と語る。

英バークレイズによると5月、原油価格に連動する主要なETFから3億8千ドルが流出した。

金のETFも残高の減少に歯止めがかかっていない。国際商品の先高観が後退し、個人投資家は株式などに資金をシフトしていると見られる。

価格が商品相場に連動するミディアム・ターム・ノート(MTN)と呼ばれる社債の需要も低調だ。バークレイズ調査では5月の発行額は1億ドルとなり、過去最低の水準となった。


読んでみて、「投資ファンドが原油や金など国際商品の売り姿勢を強めている理由」がきちんと理解できただろうか。利益を追求している以上、先高だと見ているから買うのであり、先高観が後退すれば売りに傾くのは当然だ。その背景を解説しないのであれば、記事にする意味がない。

ただ、日経の商品先物関連記事では市場全体が買い越しや売り越しになっているかのような書き方をするのが通例なのに、今回は「投機筋によるWTIの買い越し残高」と表記していたのは評価できる。「初歩的な課題を1つ克服したに過ぎない」と言われれば、その通りではあるが…。

※記事の評価はE(大いに問題あり)。

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