2015年6月15日月曜日

日経1面「消費回復にらみ投資拡大」の怪しさ

「日曜の1面アタマなんて、こんなもんでしょ」と言われればそうかもしれないが、14日付の日経朝刊に出ていた「消費回復にらみ投資拡大」は苦しい内容だった。特に、記事の柱にもなっているコカ・コーライーストジャパンの話が怪しい。当該部分は以下のようになっている。

オランダの王宮(アムステルダムのダム広場)
                           ※写真と本文は無関係です
【日経の記事】

国内消費には明るさも見え始めた。日本チェーンストア協会によると、4月の全国スーパー売上高は前年が駆け込み需要の反動で5.4%減だったとはいえ、6.4%増となり、増税後初めて増えた。家電量販大手4社の売上高も5月まで2カ月連続でプラスだ。

一方、家計調査では4月の2人以上世帯の1世帯あたり消費支出が物価の動きを除いた実質で1.3%減と13カ月連続で落ち込んだ。消費を巡る統計は明暗が入り交じるが、4月の実質賃金が2年ぶりに上昇に転じるなど「消費回復への期待が広がっている」(日本チェーンストア協会)。

こうした流れを受け、東日本を統括するコカ・コーライーストジャパンは9月にかけ、4工場に新しい生産ラインを5つ設ける。緑茶飲料「綾鷹(あやたか)」やコーヒー「ジョージア」などの供給体制を拡充する。

14年12月期は消費増税などの影響もあり、1.9%の減収(統合の影響を除いた比較可能ベース)となった。15年12月期はここまで販売が順調で、9.3%の増収を見込む。販売増へ工場向け設備投資額は前年を約25%上回る296億円を計画。13年のグループ再編以後では最大となる


問題点を3つ指摘しよう。


(1)「グループ再編以後では最大」に意味ある?

販売増へ工場向け設備投資額は前年を約25%上回る296億円を計画。13年のグループ再編以後では最大となる」と書いているが、再編が「13年」なのに「15年12月期の工場向け設備投資額が再編以後で最大」と言われても困る。再編後で比較できるのは、現時点で「14年12月期」と「15年12月期」しかない。「13年12月期」を入れても3つだ。その中で「最大」と意義付けする意味は乏しい。何とか話を盛り上げようと工夫した結果だとは思うが…。


(2)元から決まっていた話では?

2013年11月14日の「コカ・コーライースト、工場などに最大500億円 17年までに」という日経の記事には「対象工場は未定だが、17年までにさらに200億円を投じて5ラインを増やしたり工場内の倉庫を拡充したりする」との記述がある。今回の記事では「9月にかけ、4工場に新しい生産ラインを5つ設ける」となっているから、「5ラインの増設は2013年時点で方針として決まっていた」と推測できる。

もちろん、断定はできない。ただ、記事で説明しているように、「4月以降の消費回復の動きを受けて投資に動いた」とすれば、5ラインの増設を決めたのは今年5月以降のはずだ。しかし、それだと5月か6月にライン増設を決定して9月には完成することになる。これはちょっと早すぎる。そうした点を考慮すると、やはり「ライン増設は元から決まっていたのでは?」と疑いたくなる。仮に「17年に完成させる予定だったが、消費拡大を見込んで15年9月に前倒しした」といった事情があるのならば、そこに触れるべきだ。


(3)どの程度の生産能力増強なの?

コカ・コーライーストの生産能力増強が記事の柱になっているのに、何割ぐらい能力が増えるのか分からないのはまずい。これは書いてほしかった。少なくとも、現時点で生産ラインが何本あるかは分かるはずだ。100ラインを105ラインに増やすのと、5ラインを10ラインに増やすのでは、同じ「5ライン増設」でもインパクトが全く異なる。「13年のグループ再編以後では最大となる」といった、どうでもいい情報を入れるなら、何割ぐらい生産能力が増えるのかに触れるべきだ。


※記事の評価はD

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