2015年5月25日月曜日

日経1面「ROE10%超 3社に1社」のいい加減さ

新聞の顔とも言える1面のトップ記事がいい加減な作りならば、それ以外の記事に期待できるはずがない。25日の日経朝刊に載っている「ROE10%超 3社に1社」は、まさに「1面アタマを飾ったいい加減な記事」だ。

ドイツのデュッセルドルフ中心部  ※写真と本文は無関係です
記事は「日本企業の資本効率が高まっている」との書き出しから始まる。しかし、最後まで読んでも、日本企業の資本効率が高まっているかどうか判断できる数値が見当たらない。記事ではROEに焦点を当て、「日本経済新聞社が14年度決算を発表した東証1部上場1714社(金融など除く)を集計したところ、32%(549社)のROEが10%を超えた米国の主要企業の平均13%、欧州の平均9%と匹敵する水準を保つ企業が増えてきた」と書いている。しかし13年度などとの比較はない。

経済記事では数値の比較が重要だ。「日本企業の資本効率が高まっている」姿を見せるのが記事の狙いなのだから、14年度決算の数値を基にするのであれば、それ以前との比較は不可欠だ。記事には「14年度のROEが改善した主な企業」というタイトルの表は付いているものの、13年度以前にROE10%超の企業がどの程度あったのかには触れないまま「10%超の企業が増えた最大の要因は~」などと背景の分析に移っている。

では、平均ROEか何かのデータを用いて資本効率が改善している姿を示しているかと言えば、そうでもない。記事によると「14年度は大企業を中心に業績が上向き、平均ROEは8.2%と13年度(8.6%)とほぼ同じ水準に並んだ」そうだ。具体的な数値を見ると、平均ROEは低下している。これで本当に「日本企業の資本効率が高まっている」と言えるのだろうか。

この記事がいい加減な作りになってしまったのは、当初想定していたストーリーに縛られ過ぎているからだと推測できる。3月決算発表がほぼ出揃った段階で、ROE関連記事を作ろうと考えたのだろう。その際に「ROE重視の企業が増えてきたし、企業業績もいいので、ROE10%超の企業が増えているのではないか。それを軸に1面アタマ記事に仕立てよう」とでも考えたはずだ。しかし、データを揃えてみたら、想定とは違ったものになってしまった。そこで「ROE10%超は3社に1社」を強調して、13年度との比較には触れず、低下した平均ROEに関しては「ほぼ同じ水準」と書いてごまかすことにしたと考えれば、納得できる。

ある程度のストーリーを思い描いて準備を進めるのは悪くない。しかし想定外の内容になった時に、当初のストーリーに固執するのは百害あって一利なしだ。当初のストーリーに強引にはめ込もうとすると、どうしても無理が生じる。想定と違うデータしか集まらなかったならば、ストーリーも書き換えるしかない。

今回の記事で言えば、「企業の意識も高まってきた。業績もいい。なのに平均ROEはなぜ低下したのか」との観点で記事を書いた方が興味深かった。それができない社内の「慣性」や「空気」があるのは分かる。しかし、それを言い訳にするようでは、今回のようないい加減な記事が紙面から消える日は永遠に訪れない。

※記事の評価はD。

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